「健康のために、1日1万歩を目指しましょう」このフレーズ、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。しかし、最近の研究で驚きの事実が明らかになりました。「1万歩」には科学的根拠がなく、むしろ“もっと少なくていい”というのです。エイジングケアが注目される中で、私たちの寿命や生活の質に最も強い影響を与える要素のひとつが「運動」です。高価なサプリメントや複雑な食事法とは異なり、シンプルかつコスパ最強の健康法が“適度な運動”であることが、複数の大規模研究から証明されつつあります。運動不足が寿命を縮める2018年にアメリカ疾病管理予防センター(CDC)が発表した調査によると、40〜70歳のアメリカ人の死亡原因のうち、約10%が運動不足に起因していることが明らかになりました。さらに、2019年に行われたヨーロッパの研究でも同様の傾向が報告されています。運動不足が続くほど死亡リスクは高まり、20年間まったく運動をしなかった人は、早期死亡のリスクが2倍、心血管疾患による死亡リスクは運動習慣がある人の2.7倍に上るというのです。だからと言って、「とにかく運動すればよい」というわけではありません!たとえばランニングは確かに健康的な習慣ですが、やりすぎは逆効果になることも。近年の研究では、ある一定の段階を超えて過度に運動を行うと、寿命が延びるどころか、かえって短くなる可能性があることが示されています。「1日1万歩」は広告のキャッチコピーだった!?「1日1万歩歩けば健康を維持できる」という考え方の起源は、1960年代の日本の歩数計メーカーの広告にあるとされています。つまり、この目安には科学的な根拠が乏しいというのです。それでもこのフレーズは広く知られるようになり、やがて「健康的な生活の目安」として定着していきました。もちろん、1万歩歩くこと自体が悪いわけではありません。しかし、科学的な視点から見ると「そこまで歩かなくても十分効果がある」ことが、最近の研究から明らかになりつつあります。現在の科学的知見では、1日1万歩がまったく無意味というわけではありません。たしかに健康には役立つものの、そこまで多くの歩数をこなさなくても十分効果が得られると考えられています。長生きに必要なのは「30〜45分の運動」か「7000〜8000歩」医学誌『梅奥診所学報』(Mayo Clinic Proceedings)に掲載された別の研究でも、運動と死亡率の関係は「U字型」であることが明らかになっています。週に2.6〜4.5時間の運動(1日あたり30〜45分)または、1日に約7000〜8000歩のウォーキングこの範囲の運動量が、最も死亡率を低下させるとされています。運動の種類は、自転車、テニス、ランニング、水泳、サッカー、バドミントン、ウエイトリフティングなどさまざま。逆に、週10時間以上の過度な運動は、効果が頭打ちになり、幸福度も下がる傾向が見られました。今からでも遅くない。「動くこと」が命を延ばす重要なのは、「何歩がベストか」よりも、「動くことそのもの」が命を支えるという視点です。年齢に関係なく、今からでも体を動かし始めることで、健康寿命を延ばせる可能性は十分にあります。現代人の多くは、運動不足と隣り合わせの生活を送っています。けれども、いきなり1万歩を目指す必要はありません。まずは7000歩、もしくは毎日30分、ゆっくり歩くだけでも、確かな効果が期待できるのです。まとめ|寿命を延ばす運動の“正解”はこれ!目標歩数は「1日7000〜8000歩」でOKまたは「1日30〜45分程度の運動」でも十分歩きすぎ・動きすぎも健康にマイナスになる可能性あり運動は“継続とバランス”が命年齢に関係なく、「今から始める」ことが何より大切