「最近なんだか疲れが取れにくい…」「前より老けた気がする」そんな悩みの裏には、“体内の時間”の乱れ――「概日リズム(サーカディアンリズム)」の崩れが関係しているかもしれません。アメリカの研究では、「朝食をしっかりとると、乱れた体内時計の回復が4日早まる」という驚きの結果も。この記事では、“夜ふかし”と“老化”の関係、そして体内リズムを整える具体的な方法を、最新の科学的知見とともにご紹介します。そもそも「概日リズム(サーカディアン-リズム)」って何?「概日リズム」とは、私たちの体に備わる約24時間周期の“体内時計”のこと。このリズムの存在は、なんと紀元前4世紀アレキサンダー大王の時代から観察されていたといわれています。当時、航海中の船員たちが、タマリンドの木の葉が一定の周期で閉じたり開いたりするのを見て、自然界に「時間の流れ」があることを発見したといわれています。また、古代中国の医学でも「気(エネルギー)は12時間ごとに臓器を巡る」とされ、人の体は“時間”とともに働くという考えが存在していました。現代では、このリズムを調整しているのは、脳の「視交叉上核(SCN)」という部位であることがわかっています。太陽光、特に青色光を浴びることでこの中枢時計がリセットされ、朝には活動モード、夜には眠りモードへと切り替わります。視交叉上核は、集中力や記憶力、運動機能、免疫力、睡眠の質など、私たちの“日常の調子”を総合的に指揮する重要な司令塔です。さらに、心臓や腸、肝臓など各臓器にも独自の“末梢時計”があり、それぞれが昼夜問わず働き続けています。小さな細胞や微生物でさえ、この概日リズムに従っているのです。概日リズムが乱れると、老化のスピードが加速する現代生活においては、夜型の生活やスマホのブルーライト、不規則な食事などが、体内時計を乱す大きな原因となっています。概日リズムが乱れると、以下のようなリスクが高まることがわかっています。睡眠障害や不安感の増加消化不良や免疫力の低下心臓病・脳卒中のリスク上昇慢性炎症の進行生殖機能や回復力の低下特に、慢性炎症は「老化の12の兆候」のひとつとされており、体内時計の乱れが老化を加速させるスイッチになるともいわれています。加齢とともに“体内時計”は鈍くなる誰もが「いいリズムで暮らしたい」と願いますが、年齢を重ねるほど体内リズムは乱れやすくなることがわかっています。その原因として挙げられるのが、主に以下の2つです。① 交感神経系からの信号が弱くなる年齢とともに交感神経と中枢時計の連携が弱まり、身体が“時間の指示”を受け取りにくくなります。その結果、夜ふかしや不規則な生活からの回復にも時間がかかるように。「50歳を過ぎてからは、1日夜更かしするだけで体調を戻すのに1週間かかる」という実例もあるほどです。② 光への感受性が低下するもうひとつの要因は、目が光を感じ取る力の低下です。高齢者は、朝の光をしっかり浴びても、体内時計がうまく反応しないことがあります。視交叉上核の感受性が落ち、リズムの再調整が難しくなるのです。つまり、高齢になると、「ちょっとした夜更かし」が体に与える影響が格段に大きくなるというわけです。若者の夜更かしも“老化の予習”かも?「若いうちは平気」と思いがちですが、毎日の夜ふかしは、将来的な老化リスクを積み重ねているのと同じです。例えるなら、体内時計に毎日45kgの重りをのせて負担をかけているようなもの。夜型の生活を続けることで、老化で乱れたリズム状態を若いうちからシミュレーションしてしまっているともいえるのです。回復のカギは「朝日」と「朝食」にありでは、どうすれば体内時計を整え、老化のスピードを抑えられるのでしょうか?ポイントは、“朝の過ごし方”にあります。太陽の光を浴びる朝になったらできるだけ早く外に出て、自然光を浴びるようにしましょう。「昼は外出、夜は照明を落として眠る」――そんなリズムこそ、体内時計の基本設定です。朝食をしっかり食べるノースウェスタン大学の研究によると、「朝食を多めに摂り、夕食を軽くすることで、体内リズムの回復が最大4日早まる」とされています。朝食はまさに、リズムをリセットするスイッチなのです。今日から始める、概日リズムの整え方夜ふかしは、一見すると些細な生活習慣に見えるかもしれません。しかし、気づかないうちに体内の“老化スイッチ”を押してしまっている可能性があります。「自然のリズムに逆らえば、必ず代償を払うことになる」―これは多くの専門家が口を揃えて語る真実です。若さを保つために必要なのは、特別なサプリや高価な美容機器ではなく、朝日を浴び、朝食をしっかり食べ、夜はしっかり眠ること。あなたも今日から、“体内時計”を大切にする暮らしを始めてみませんか?